眠れずに眺めてた あのテレビ 僕らはいつまでも忘れられないまま
古い映画や、懐かしい場所に行った時に感じるやさしさ。自分のことを知ってるのは自分しかいないはずなのに、自分以外の親友や彼女にぜんぶバレていた時のような気恥ずかしさ。
本当のことを話すとき、いつも邪魔になるのは他ならない自分だ。いつのまにか身につけた知識、プライド、肩書き、他のいろいろ。どこへかしまったはずの本当の気持ちは、言わないでいた方がうまくやれるのかもしれない。そう思っているうちに忘れていく。経験していくうちに、そうやってうまくいくことを、いつか知ってしまったのかもしれない。
若さ故の薄暗さより 大人方の明るさの方が違和感だ
PVだって古い映像ではない、ワザとレートを低くして古くしている。ワザとちょっと昔の比率にしている。でもそれにどこか、煩わしさを感じないのはなぜだろう。
どこかでみたような風景かもわからないのに、懐かしさを感じたのは僕だけだろうか。ドラマチックに展開する曲に、彼らがぶつけるのは過去でも未来でもない、いつもの今だ。
奪い取られてた でもいつか僕もきっと気づかずに 奪い取ったんだろう
序盤、Aメロで奏でた日常のあれこれを、一つ残らず全部持って、言うこの歌詞。彼女や親友は、言わないままでは僕が我慢できないことくらい知っていたんだろう。テレビが見たくて起きていたわけじゃない。眠れずにいたのは。あのドキドキは。終わってほしくない瞬間、これはもしかして、誰にでもあるのかもしれない、そう思わせるこの魔法こそが、マイヘアの最大の魅力だ。
そしてこう続ける。”無くなったことばかり、ずっと思い馳せないでいて。”
“続きは、これから”
僕ら年老いても この街は変わり続けていくんだろう
続きはこれから、そういう彼らにも、後がないことは彼らが一番わかっている。僕が忘れていってしまうことも、彼女が変わっていってしまうだろうことも。
もう2度とないことがわかっていたら、今の僕にでも変われたのかもしれない。
本当のことも、話せたのかもしれない。あの眠れない夜に。テレビを見てる自分が。「いつか忘れる日」は、知ってるやつらだけにわかればいいんだと、自分に言い聞かせながら。
このラストサビの前に入る少しのブレイク。聞き終わると、どうしてもこの一瞬が聴きたくなってしまう。この曲の終盤、散らばったパーツが繋がっていく。僕らが聴きたかったのは、答えではない。悩んで逡巡し、迷って肩を落とし、それからどうしていくのかを問う、その姿だった。
それをなんと呼べばいいのかわからないけど、椎木の遠くを見る目に写る映像を僕らは見てる。いくら望んだってありえない、その姿に、何かを重ねて。
彼らがつけた曲名は、「次回予告」。
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