‘例えば曲はここで終わってしまうけれど’ 、そう言って曲は続く。
見えない重圧、肩にかかるストレス。日々の中で徐々に降り積もるそれらは、聴いているあいだ、音符が踊っている間、少しずつなくなっていくような気がした。流れるメロディラインが僕の身体を通り抜けていく。
終わらないcメロは何度も続く。繰り返すソリチュード。
目の前に景色がでては消えていく。名作ドラマのエンディングシーンのように、今まで僕が見てきたもの、経験してきたもの、それらすべてが、まるで輝いていたように見えた。同時に胸がザワザワした。
何か大切なことを、忘れていたような、もう少しで思い出せそうな、そんな不思議な感覚だ。
時の彼方へ吸い込まれてく 騒がしい胸のざわめき
懐かしいとは少し違う。聴いている人にしかない共鳴のようなもの。それぞれが、それぞれの景色をきっと思い出しているんじゃないか。だれも、みんながそれぞれの、誰とも分かり合えない記憶を。
「まだ聴いていたい、あともう少しだけ。」
2回目のcメロが終わると、その想いを汲んだように始まる名間奏。このストリングスのなんと美しいことか。滑らかに、鮮やかに、ステップを踏むメロディ。琴線を鳴らそうとするテンションはそのままに、登場人物達はお辞儀をする。
「それはまた今度にしよう。」
長い夜をずっと忘れないで
最後のサビが始まる。ここから先は君次第だと、終わりに向かっていく曲。待ってくれ、と言いかけて、必死で口をつぐむ。
「あなたなら大丈夫」
この暖かさはなんだろう。曲が始まる前にはなかったはずなんだ。踊りながら、彼らは大切なことをたしかに言っていた。所々しか聞こえなかったけど、きっとそれでいいんだと思った。あとを埋めるのは聞いている僕らだ。寂しいけど、それを超えて清々しさが身体の中を満たしている。
曲名はROYAL Memories
直訳は、素晴らしい記憶。
そうだ彼らは—。
コメントを残す