0803wws
2019-08-04

white white sisters_無意識の中にある閉鎖的な意識について

拝啓

お元気ですか。
何を思いながら過ごしていますか、どんな音楽を聴いていますか。
私は最近、2010年の七夕に発売された、 white white sisters 「[euphoriaofeuphobia] 」を繰り返し聴いています。シューゲーザーの強い印象を持たせるエレクトロ・ロックバンドです。BOOM BOOM SATELLITESの悲しみに、虚無感に心を沈ませていた最中に出会ったバンドです。「今更?」と言われるとそれまでですね。そうです、今更です。それは私にとって、最終日に届かない真夜中に突如現れた星の瞬きのような、そんな存在でした。

white white sisters are
yuya matsumura / 松村勇弥 / Gt・Vo・programming
kouta tajima / 田嶋紘大 / VJ・artwork
kazumasa ishii / 石井一正 / Dr(~2012.4)

1st mini Album / [euphoriaofeuphobia]
01.falling down
02.sns
03.pigs
04.imperfect conflict
05.grader has been survived

ロックと先鋭的なエレクトロの融合、BOOM BOOM SATELLITESがそれについての硬質で、洗練されたサウンドならば、一方でwhite white sistersは実に生々しく、有機質に展開をしていく大胆なサウンドを持っていると思います。

爆発力のあるタイトなドラムに、感情的な轟音を掻き鳴らすギター。無意識の中にある閉鎖的な意識。エレクトロ・ロック・ダブステップ・R&B。様々なジャンルを丁寧に掬い、ひたすらに音楽を尽くす彼らに、私は最高潮の愛を覚えました。耳馴染みの良い音楽は楽しいかもしれませんが、それだけでは面白くありません。もっともっと、複雑に触れ合いたいと思いました。

今アルバムの特徴の一つに、ボーカルの存在感があります。山崎洋一郎が “エレクトロニックなダンスミュージックの場合、歌のうまいシンガーをフィーチャリングするか、ヴォーカルをサウンド・デザインに寄せる方向に加工して全体に整合感を持たせることが多い。” とロッキングオンのレビュー( 今週の一枚 white white sisters / https://rockinon.com/blog/yamazaki/105185 )で触れていますが、ボーカルの体温を信頼する事の出来るこのアルバムに、そういった整合感は必要ないのかもしれません。ボーカル、yuya matsumura (以下松村)の、熱く、血の通った歌声が、無機質なサウンドにとてもよく絡みます。二つの距離が遠ければ遠くなる程に、その完成度はどんどん高くなってゆくように思えました。随所に散りばめられたグリッジ音は、夜空で瞬く星のようでした。

二つ目の特徴は、楽曲の複雑性です。彼ら独自の解釈が、サウンド内で飽和をしている印象がありました。ギター・生ドラム・そしてシンセサイザーの打ち込みが始終混沌と混じり合い、ひとつにまとめあげることはとても難しいのかもしれない、と思いました。また、フルアルバム以降の楽曲は、ドラマーが入れ替わったことも関係してか、それぞれの音がストイックな「らしさ」を表現しているような印象を受けました。当時の重量感のあるノイズ、そしてマニアックな曲構成は、これからに対する実験だったのかもしれません。勢い、爆発力はいつの時代も初期衝動には敵わないなあ、と思いました。

また、white white sistersの強みには、「正式メンバーにVJ・デザイナーがいる」という部分が大きいです。「このバンドには絶対にVJが必要だ」と言う松村。現在、white white sistersの全ての楽曲にはオリジナルの映像があります。辻川幸一郎やTAKCOMの映像表現に衝撃を受けて映像を本格的に始めたというVJのkouta tajima。従来のエレクトロなサウンドから連想させるであろう、生命を感じさせない無機質で冷えた景色を裏切ります。ロックとエレクトロの存分な融合を可視化させた、体温の見せる映像作品が多く見受けられます。視覚と聴覚の架け橋、トリップするには十分な条件だと思いました。

デジタルに、無機質なそれらに、心を動かされたり熱くなってしまう事。当たり前といわれたらそうなのかもしれませんが、時々、ふとそれについてとても不思議な気持ちになる事があります。約九年前のアルバムですが、white white sisters 1st mini Album 「[euphoriaofeuphobia] 」とても、とてもオススメです。どうか、あなたにも触れてもらえますように。酷暑の折から、くれぐれもご自愛のほどお祈り申し上げますね。

敬具

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